インビジブル・ラブ(148)

 映画は、まあ悪くなかった。海外ロケシーンがあるということは、金がかかってる。さすがにヒット作の映画化だ。
 愛海は終始、身を乗り出してストーリーにのめりこんでいた。こういうのを見せると、今度は刑事の海外出張なんて夢を持っちまいそうだ。
 昔のドラマみたいに、俳優の顔ぶれを見れば、すぐに犯人がわかるというチャチな作りではなく、けっこう意外な大物俳優が犯人役だった。
 今の時代は、犯人役や悪役のほうが、主人公を演じるよりもオイシイのかもな。――悪人の俺が言うのも、おかしな話だが。
 そう思いながら、エンドロールが流れるのを眺めていると、俺の目はある一箇所に釘づけになった。
 俳優たちのあとに映し出される製作スタッフの名前。その中に、見覚えのある女の名が載っていたのだ。
 それを見たとたんに、すっかり忘れていた悪夢のような記憶が呼び覚まされた。

「――ねえ、淳平ってば」
 気がつくと、観客たちがぞろぞろと出て行くところで、愛海も隣の席から立ち上がっている。
「もう、映画終わったよ。寝てるの?」
「……いや」
 外は、もう真っ暗になっていた。きらびやかな町の雑踏をしばらく歩いてから、俺は低く言った。
「思い出したかもしれない」
「何を?」
「俺を殺す動機を一番持ってる女のことだよ」
「ええっ!」
「高見プロダクションって知ってるか?」
「うん、けっこう有名な俳優専門のプロダクション」
「そこの社長、高見リカコ」
 まるで苦い薬を吐き捨てるような調子で、俺はその女の名前を発音した。


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