インビジブル・ラブ(241)

 南原署では、8月に入って、二件の傷害事件が起こった。だが、いずれの場合も被害者本人や近くの人がしっかり目撃しており、犯人はすぐに逮捕された。
 コンビニ強盗の件では、警視庁の捜査一課から都築警部が、他の署轄で起きた事件との関連を調べに来た。
 都築警部は、連続婦女暴行殺害事件のとき、捜査本部で愛海とコンビを組んだイケメン警部だ。
 相変わらずスマートにスーツを着こなす気に食わない奴だが、自分のキャリアや才能をひけらかさないところは、たいしたものだ。
 眼鏡の奥の目が、さりげなく愛海に注がれているところを見ると、いまだに愛海のことをあきらめきれないのかもしれない。
 こいつと恋人になれば、愛海は幸せになれるだろうに。奴をふって、幽霊の俺を選んじまうなんて、正直サイアクの選択だと思う。
「今からでも、遅くないぞ」
 と憎まれ口を言いたくなってしまう。でも、心の中はやっぱり嬉しいのだ。
 好きな女に惚れられるほど幸せなことが、この世にあるだろうか。俺の不運なところは、それが生きている間じゃなかったことだけだ。
 というわけで、事件の数の割りには出動回数が少なく、比較的平穏だった刑事課は、交替でまとまった夏休みを取ることができた。
 だがしかし。
「海は絶対にゆるさねえ」
 行き先のことで、俺たちはさんざんモメた。黙ってすましていれば極上の美女の愛海。水着姿でひとりで海水浴場をかっぽしようもんなら、ナンパのビッグウェーブに会っちまう。



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