インビジブル・ラブ(408)


番外編

「……嘘だろ」
 俺は頭を抱えながら、起き上がった。
 真上の部屋からは、信じられない音量のアラームが、さっきから一分おきに鳴り続けている。
 天井を突き抜ける、火災報知機のようなけたたましい音は、階下でさえ寝ていられないのに、同じ部屋で平気で寝ていられる神経が信じられない。
 フリースの上着を羽織ると、外に出る。階段を上がり、真上の部屋の扉をノックしようとして、はずみでノブに手が当たった。
「うわ?」
 ノブは何の抵抗もなく回ると、するりと扉が開いた。
 まさか、夜中のあいだに、誰かが鍵をこじ開けて侵入した?
「小潟刑事!」
 俺は猛然と、玄関でサンダルを脱ぎ捨てた。
 奥の部屋のふすまをガラリと開けると、眼前に繰り広げられている光景に、思わず大声を上げそうになった。
 たとえそこに死体があったとしても、これほど驚きはしないだろう。
 東京の警視庁から交換制度で赴任してきた小潟愛海刑事は、掛けふとんを蹴っ飛ばし、大の字になって幸せそうに高いびきをかいていた。クマの絵柄のパジャマは半分以上がめくりあがり、乳首のあたりまで丸見えになっている。
 意識が途切れそうになり、そっとふすまを閉めた。
「お……落ち着け」
 破裂しそうな心臓をなだめ、自分に言い聞かせる。
 こんなところで大騒ぎして、誰かに見られたら、言い訳のしようがない。いくら鍵が開いているからと言って、独身女性がひとりで寝ている部屋まで突進して、ハダカを見てしまうなど。
 俺とあろうものが、どうかしている。


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