インビジブル・ラブ(444)


 婦人警官に付き添われてパトカーに乗り込む小野寺美春を見送っていると、西島課長が近づいてきた。
「今、連絡があった。おまえが言ったとおりの場所を掘ったら、白骨が発見されたそうだ」
「ありがとうございます」
「なぜあそこに死体があるとわかったのか、俺の納得のいく報告書が書けるまで、帰れないと思えよ」
 課長を乗せた車も行ってしまい、人だかりのしたカラオケ店の前には、俺と愛海が残された。
「美春さん、何かの罪に問われるのかなあ」
「いや、刑法には親族の特例というのがある。実の母親が殺人を犯したことを子どもが黙っていても、罪にはならない。せいぜい、死体が埋まっているのを届け出なかったことで、軽犯罪法違反に問われるくらいだ」
「さすが警部補だね。頭いい」
「うるせえ」
 夜空を見上げると、小野寺美春の母親の幽霊が浮いていた。娘の行方が心配で、俺についてきたのだろう。
「というわけで、美春はだいじょうぶだ。安心しろ。あの世への行き方がわからなければ、年じゅう釣りをしてる太公望って爺さんがいるから、そいつに教えてもらえ」
 女はうなずいて、そして微笑んだように見えた。そして、ネオンが煌々と照る夜空に霧のように薄くなって、消えてしまった。
「……淳平」
 俺の横顔を熱っぽく見つめる愛海の視線を感じる。「思い出したんだね」
「認めるしかないな。幽霊の気持ちも結婚詐欺師の気持ちも、まるで経験したみたいにわかっちまうんだから」
 上着のポケットに突っ込んでいた両手を出して、じっと見つめた。「けど、やっぱり、俺は水主淳平にはなれない。この身体は水月俊平の身体で、これはやつの人生なんだ」


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