「すみません」
店の扉を開ける音がして、若い男の声がした。
泣きはらしてぼんやりした視界をそちらに向けて、私は驚愕した。
「栄一さん……!」
「は?」
そこに立っていたのは、まぎれもなく彼と同じ顔をした男性だった。
でも、すぐにわかった。彼ではない。
茶色に染め、ムースをつけた流行の髪型。Tシャツとジーンズ。
「俺は、校倉遥(よう)。校倉栄一は俺の祖父だ」
うざったげに髪の毛を掻きあげると、彼は私をじろりと見た。「あんたが、『たえ』って人か?」
「は、はい」
「祖父から手紙を預かってきた。祖父は……一ヶ月前に死んだ」
思考が停止した頭を抱えながら、私は彼の差し出した手紙を受け取った。
「たえさんへ」
流れるような達筆で、手紙はしたためられていた。
「たえさん
きみがこれを受け取る頃、僕はもうこの世にいない。
きみにひとことお礼が言いたかった。
幸い、昨春から僕の孫のひとり、遥が京都大学に進学した。僕が死んだら、彼にこの手紙をきみに届けるように言い置いていく。
きみは会ったら驚くかもしれない。遥は僕の若い頃にそっくりだからね。
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