ご主人さまのお好きなレシピ(104)


 考えたら、バカげてるよね。人間のことを食べ物としか見ていない一族に、人間が恋をするなんて。
 ウサギがライオンに恋するようなものだ。イワシがサメに恋するようなものだ。恋心が実る可能性なんか、これっぽちもない。
 でも、あきらめれば、そこで終わり。ゲームセット。
 私は、あきらめたくない。どんなに不可能でも、ご主人さまに対する気持ちを途中であきらめるなんてできないよ。
 だから私は、マユを応援したいと思った。
 捕食者と食物でもなく、主人と奴隷でもない。イアニスさまとマユに、そういう新しいつながりを持ってほしい。
 現にイアニスさまは、マユが去ったとき涙を浮かべていた。彼の心に大きな変化が起きた瞬間を、私は確かに見たのだ。
 同じことが、レオンさまにも起きてほしいと願っているから、私はふたりを応援するのかもしれない。
「ご主人さま。ヴァラス子爵をこの週末、食事にお招きしたいんですが」
 私の言葉を聞いて、ご主人さまはうさんくさげに、本から顔をあげた。執事の来栖さんは、くすくす笑っている。
「また何か、悪巧みしていますね」
「人聞きの悪い。なんたって食事は大勢で食べたほうが美味しいし、それに究極の美を追求するのは料理人の務めです」
「美?」
 レオンさまが、これ以上意外なことばを聞いたことがないという顔をなさる。
 私は腰に手を当て、胸を張って答えた。
「『仲良きことは、美しき哉』って言うじゃないですか!」



第二章 終

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