ご主人さまのお好きなレシピ(339)


 ローゼマリーさまは、赦してくださったんだ。
 だからすべてを託してくださった。ダマスクローズの生命を引き継ぐことを。その花びらでローズティーを淹れることを。そのお茶を毎日ご主人さまにお出しすることを。
――そして、私がご主人さまの隣を歩むことを。
 新たな涙が伝い落ちる私の頬を、ご主人さまは人差し指の腹でそっとぬぐってくださる。
 なんという、深い愛情に満ちたしぐさだろう。今まで受けたことのないお優しさに、私は余計に泣けてしまう。次々とあふれる涙に頬がふやけそうだ。
 そのことに業を煮やしたのか、いきなりご主人さまは私の脇に腕を差し入れた。
 あっというまに体のバランスが崩れ、足が宙に浮いた。いわゆるひとつの、お姫様だっこってやつ?
「だあーっ! な、なにをなさるんです」
「庭を歩く間に、そなたは何回立ち止まったと思う。十度だ。十度。もう待てん」
 長い髪がなびくほどの勢いで、レオンさまは私を抱いたまま、軽々とテラスの階段を駆け上がり、掃き出し窓を押し広げて、お屋敷の中に入った。
「お……降ろしてください」
「だめだ」


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