ご主人さまのお好きなレシピ(342)


 コックコートのボタンが外され、ご主人さまのはだけた胸と私の乳房が直接触れ合う。それだけで、脳天までしびれるような快感が全身を貫いた。
 これまでだって、私の毎日はご主人さまのことだけで埋め尽くされていた。買い出しに行くときも、献立を考えるときも、料理をするときも、頭の中にはご主人さましか住んでいなかった。
 けれど、体のすべてがご主人さまとひとつになる感覚は、それとはまったく異次元のものだった。想像をはるかに超えていた。
 全身が震えて、崩れて、とろけだしていきそう。
 天に昇るような心地にうっとりと意識をゆだねていた私は、ちくっという感覚で正気に戻った。
 ご主人さまは顎をもたげて、ひと声苦しそうにうめいた。
 髪がみるみる銀色に、深い黒の瞳は紅蓮の炎の色に染まる。唇から覗く歯の形も変わっていた。その歯の先で私の口の内部に触れてくださったのだろう、頬の裏がかすかに痛み、舌先で触れると血の味がする。
 ああ、そうか。
 たぶん、これは一族に加えられるための儀式。そして、たぶん……恋人同士のための儀式。
 レオンさまがかつてローゼマリーさまに施したはずの儀式。
 

●NovelーLine● †ハイファンタジーズ† 携帯小説Ranking
次へ 前へ TOP