ご主人さまのお好きなレシピ(345)


「なぜ……ですか」
 腕にしがみついてわんわん泣いている間も、レオンさまはじっと私の髪をなで続けてくださった。
 以前にも、ご主人さまは同じことをおっしゃった。耳元でかぎりなく優しい声で、
『そなただけは、ずっと人間でいてもらわねば困るのだ』
 あのときは、まだローゼマリーさまを忘れておられないからだと勝手に誤解してしまったけれど。
 そういうことではないんだ。別の理由があるんだ。
「納得できません。今ここで、ちゃんと理由を教えてください」
「今は言えぬ」
「じゃあ、やっぱり納得できません」
「ただひとつ言えるのは、そなたが人間でいる限り、俺はどんな困難にも立ち向かうことができる。一族の長レオニード大公として最大の事業を成し遂げるまで」
「アレクサンドルさまとの闘いに勝つまでってことですか」
「それよりももっと大きなことだ」
 わからない。ご主人さまはいったい何をしようとしてるんだろう。全然わからないよ。
「それまで、そなたは、はるか彼方の灯台として、これからの俺を導いてほしい」


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