あなたの歌が聞こえる(11)


「きみを死ぬよりつらい目に会わせた。それなのに俺はきみに腹を立て、ますます傷つけてしまった。ずっとそばにいようと決意したのも、本当はきみのためじゃなかった。ただ自分が楽になるために、赦してほしいと願ってきただけだった。
たぶん俺はこのまま、一生赦されることはないんだと思う。きみに完全に忘れ去られることが、俺への永遠の刑罰なんだと思う。
俺には歌うことしかないと、シヴァに言われた。考え続けて、その意味がやっとわかった。
二度とここへは来ない。美玖。でも俺はきみを思い続けて、歌を作る。最高の歌を作るために死ぬまで歌い続ける。きみがほかの男を愛して幸せになったとき、いつかその歌に耳を傾けてほしい。
俺のことは……忘れたままでいいから」
 怜は美玖の隣に座ると、ギターをかき鳴らし始めた。
 静かなアルペジオで始まるバラード。

『狭い部屋 膝をかかえ 
ぼくの歌をいつも 最初に聞いてくれたのは きみだった
小さなステージ ライトが消えて
人々が去ったあとも ひとり待ってくれたのは きみだった』

 歌いながら、怜の頬に涙が伝った。

「レイよ! レイの声だわ!」
 中庭の向こうにいた若い女性の患者が、最初に気づいて大声を上げた。

『たくさんのざわめきの中で ぼくはきみの声をさがしていた
果てしない雑踏の中で きみの笑顔だけを求めていた
きみがいなくなってから ずっと
暗闇の中を 歩きながら 』

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