あなたの瞳の殺意(4)

「御用でしょうか。社長」
 彼は、喉を詰まらせたような音を立てて、あわてて床に目を落とした。
「用があるから呼んだのだ。今は見てのとおり忙しい。少し待っていろ」
「しかし……」
「顔をそむける必要はない。そこに立って黙って見ていろ」
「社長!」
「オレの言うことが聞けないのか」
 私は助けを求めるように、倉木を見た。しかし彼は、歯をぎしっと噛みしめたきり、言いつけどおりまっすぐに、夫と私を見つめている。
 ふたりともわかっていた。逆らうことは、私たちの関わる多くの人を窮地に追い込むだけだということを。
 深津は私を押し倒すと、羞恥のあまりに縮こめようとする私の脚を、無理に開かせる。
 暖炉で赤黒く揺れる炎に、私のすべてが照らし出される。
「どうした。卑猥な女だな、おまえは。見られたほうが燃えるのか」
 身をよじる私に、聞くに堪えない夫のことばが、容赦なく浴びせかけられた。
 頬を涙が伝った。
 夫の舌が私を這い、指が玩ぶのを、倉木はただ見つめていた。
 顔は無表情のまま。しかし瞳だけは、たとえようもなく荒々しい光を放って。
 彼の息遣いが聞こえるほどすぐそばで、浅ましい姿態をさらす私。
 死ねるものなら死にたい。
 燃えるようなその瞳で、私を焼き尽くしてほしい。
 私は声を抑え切れずにあえいだ。意に反して私の内部が次第に熱く膨張してくる。
 何かを掴みたくて、思わず腕をのばす。
 あなたがいとしい。
 からだは憎む男の腕の中でも、私の魂を抱いているのは愛するあなただけ。
 深津に貫かれたとき、私の頭は白濁し、無数の泡の飛沫へと溶けていった。

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